電子情報技術基準:概要

アクセス委員会は、障害者のためのアクセシビリティを専門とする独立した連邦政府関連機関である。2000年12月21日、同委員会はリハビリテー ション法508条修正版に基づき、電子情報技術アクセシビリティ基準を公示した。また、アクセス委員会は、その他の諸法律の下で、建築環境、輸送車両、電 子通信機器のためのアクセシビリティ・ガイドラインを作成し維持すること、また、連邦政府から資金調達を受けている施設のためのデザイン基準を義務付ける ことを目的として設置された。以下で示されているのは、電子情報技術と508条に盛り込まれた基準の概要である。

リハビリテーション法:508条

1998年、連邦議会はリハビリテーション法を修正し、連邦政府部門における情報のアクセシビリティに関連する諸規定を強化した。本法の修正に伴 い、508条は、連邦政府の電子情報技術へのアクセスを義務付けるものとなっている。本法は、連邦政府におけるすべての電子情報技術を網羅するものであ り、その技術の開発、調達、維持、利用において連邦政府機関のすべてに摘用されるものである。連邦政府機関は、「過度の負担」が生じない範囲で連邦職員お よび一般市民がアクセス可能であることを保証しなければならない。また、本法は、アクセス委員会に対し、連邦政府の調達規定に順ずる当該技術のアクセス基 準を作成することを定めた。

508条の摘用範囲は連邦政府部門に限られ、民間部門には適用されない。また、一般的に連邦政府資金の受給者に対し、その要件を強要するものではない。

基準の作成

本法が施行されてまもなく、アクセス委員会は、作成する基準に関する提言を取りまとめるために諮問委員会を設置した。1999年5月、電子情報技術 アクセス諮問委員会(EITAAC)は、その作業をまとめ委員会に対し勧告を提出した。同諮問委員会は、業者、様々な障害者関連組織、その他本件に関わる 諸問題に関心を寄せる団体の代表者27名で構成されている。2000年3月31日、アクセス委員会は、諮問委員会の勧告を十分に反映させた基準案を策定し 提案した。策定された基準案は、米国官報で発表され、60日間にわたって広く市民からの意見を求めた。同委員会は、提案された基準案の審議において指摘さ れた問題点を通して様々な検討課題に関する情報や意見を探った。100を超える個人や団体から基準に関する意見が寄せられた。それらの意見は連邦政府機 関、IT関連業者や障害者関連団体の代表者、障害者自身からのものであった。アクセス委員会は、これらの意見を再検討することによって基準の最終案をまと め、米国官報において再度公表した。この最終案は、連邦調達規則の一部となり、連邦機関が電子情報技術のプロダクトやシステムのアクセシビリティを判断す る際の参考となっている。

実施と施行期日

508条は、連邦政府の取得する技術がアクセス可能であることを保証するために連邦調達過程を用いている。本法はまた、障害を持つ個人が、連邦政府 機関に対し、基準に一致していないという申立てにより提訴することのできる行政手続きを定めている。当手続きは、リハビリテーション法504条(連邦政府 が資金を調達するプログラムやサービスへのアクセシビリティを対象とする)の下で制定された訴訟手続きと同一のものである。個人はまた、連邦政府機関に対 し、差し止め請求や弁護士費用を求める民事訴訟を起こすこともできる。508条の実施規程は2001年6月21日に施行された。

法令により、508条の実施規程は、施行日およびそれ以降に調達される電子情報技術に限って適用される。従って、508条は、施行日以前に調達され た技術を委員会の基準に適合させるために改良することを目的とする訴訟を認めるものではない。しかしながら、508条の実施メカニズムは調達に限って適用 されるのだが、本法は、連邦政府機関によって開発され、利用され、維持されたすべての技術へのアクセシビリティを義務付けるものである。さらに、その他の リハビリテーション法の条項は連邦政府のプログラムへのアクセス (504条)、また障害を持つ連邦政府職員に対応する施設の整備(501条および504条)を義務付けている。連邦政府機関が、これらの条項を遵守してい るかどうかを判断するための尺度としてアクセス委員会が508条に定めた基準を汎用することは可能である。

「過度の負担」

連邦政府機関は、電子情報技術アクセシビリティ基準を満たすために過度の負担を強いられるような場合、基準を遵守する必要は無い。ここで言う「過度 の負担」とは、米国障害者法(ADA)やその他の公民権法の中で用いられている文言、すなわち「著しく困難でコストがかかる」と定義されている用語と矛盾 するものではない。しかしながら、連邦政府機関は、なぜ基準を満たすことが所与の調達行為にとって過度の負担となるのかを説明する義務があり、さらに、障 害を持つ個人に対し、該当するプロダクトや情報、あるいはデータを提供しなければならない。

基準

総則(A節)

基準とは、対象となる技術の種類を定義し、アクセシビリティの最低水準を規程する条項を示すものである。その適用条項(1194.2)は、基準の適 用範囲を概括している。また、基準は、コミュニケーションや複製、演算、保存、プレゼンテーション、制御、転送、制作のために用いられる技術を含む、連邦 政府部門におけるありとあらゆる電子情報技術をすべて対象とするものである。また、基準の対象は、コンピュータ、ソフトウェア、ネットワークシステム、周 辺機器およびその他の電子事務機器を含む。基準の中で、電子情報技術とは、「すべての機器あるいはその相互通信システムやサブシステム、つまりデータや情 報の作成、変換、複製において利用される機器」であると一部定義されている。

A節では、適用除外されるものについて解説し(1194.3)、用語を定義し(1194.4)、等価あるいはそれ以上のアクセシビリティを可能にす る代替手段として認められているものについて言及している(1194.5)。508条に一致する基準は、軍の指令、兵器、諜報、暗号作成に利用されるシス テムを適用除外している (但し、国防に関する目的で、あるいは国防省の機関や職員によって利用される日常の業務や管理システムはこれに含まれない)。基準はまた、メンテナンスや 修理あるいはそれに類似する目的で整備担当者によってのみ利用される「出納事務」の管理機器を適用除外している。

基準は、民間団体との請負契約の下で連邦政府機関によって調達される技術を対象としているが、請負契約やその納品物に直接関連するプロダクトにのみ 適用される。例外として明らかにされているのは、基準が連邦事業請負契約に付随する技術には適用されないという点である。ゆえに、連邦政府機関との契約の 一部として特定されていないプロダクトが基準を満たす必要はないということになる。たとえば、契約に従って連邦政府機関のために報告書を作成している企業 は、アクセス可能なコンピュータやワードプロセッシングソフトウェアを調達する必要は無いのである。仮にそれらが契約履行のためにのみ利用されるとしても 調達する必要は無い。しかしながら、そのようなプロダクトが契約の納品物として連邦政府機関の財産になる場合、あるいは連邦政府機関がプロジェクトの一部 として、請負業者によって利用されるプロダクトを購入した場合は、基準を遵守しなければならない。また、連邦政府機関がそのウェブサイトを作成するために 企業と請負契約を締結した場合、基準は、当該機関の新しいウェブサイトに適用されるが、企業自身のウェブサイトには適用されない。

技術基準(B節)

本基準は、以下のような様々な種類の技術に対し、それぞれ具体的な基準を定めている。

  • ソフトウェアアプリケーションおよびオペレーティングシステム
  • ウェブサイト利用による情報およびアプリケーション
  • 電子通信プロダクト
  • ビデオおよびマルチメディアプロダクト
  • コンテンツ内蔵、クローズドプロダクト(例えば情報キオスク、電卓、ファクス装置)
  • デスクトップおよびポータブルコンピュータ

本節は、技術仕様とパフォーマンスに基づく要件が示されており、対象となる技術の機能性に焦点を当てている。この二重のアプローチは、動的で進化し 続ける関連技術の性格と基準遵守を促す明白で特定されたスタンダードの必要性と両方を十分に踏まえたものである。ある規定は、障害を持つ人々が情報収集や コミュニケーションのために通常利用しているスクリーンリーダーや点字ディスプレイ、TTYなどの機器の適合性を保証することを定めている。

ソフトウェアアプリケーションおよびオペレーティングシステム(1194.21)

ソフトウェアの仕様のほとんどは視覚障害者のための使い勝手に関わるものである。たとえば、ある規定では、マウスのようなポインタ装置を使えない視 覚障害者に不可欠なキーボード操作装置の代替仕様が義務付けられている。その他、アニメーションディスプレイ、色やコントラストの設定、点滅度、電子 フォーマットなどにも規定を設けている。

ウェブサイト利用によるイントラネットとインターネットの情報およびアプリケーション(1194.22)

ウェブサイト利用による技術・情報の基準は、ワールドワイドウェブ・コンソーシアムのウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブによって作成された アクセスガイドラインに基づいている。これらの規定の多くは、コンピュータスクリーン上の情報を自動的に音声出力したり、リフレッシャブル点字ディスプレ イに変換したりできるスクリーンリーダーのような様々なユーザ支援プロダクトに依存する視覚障害者のためのアクセシビリティを保証するものである。言語的 タグあるいは画像やフレームのようなフォーマットデバイスの識別表示に関する規定のいくつかは、知覚可能な方法でユーザが読み取ることができる装置を基準 としている。この基準は、ウェブサイト上の画像や動画の使用を禁ずるものではなく、そのような情報がアクセス可能なフォーマットで利用できることを保証す るものである。一般的に、この基準は、テキストラベルの使用または画像やいくつかのフォーマットエレメントのためのディスクリプタ(記述子)の使用を定め たものである(HTMLコードはすでに画像の言語的記述法として用いられるAlt Textタグを提供している)。本節はまた、マルチメディアプレゼンテーション、イメージマップ、スタイルシート、スクリプト言語、アプレットとプラグイ ンおよび電子フォームユーザビリティについても定めている。

本基準は、連邦政府のウェブサイトに適用されるが、民間のウェブサイトには適用されない(但し、サイトが連邦政府機関との契約の下で提供されているものではない場合に限られる。この場合、連邦政府との契約の対象となっている部分のサイトは基準の遵守が必要である) アクセシブルサイトは、単にアクセスするだけにとどまらず多くの利点を提供する。例えば、「テキストオンリー」オプションを持つサイトは、より迅速なダウンロードの代替手段を提供し、ウェブ上のデータを携帯電話やPDA(携帯端末)へ送信することを容易にしてくれる。

電子通信プロダクト(1194.23)

本節の基準は、主として聾または難聴者によるアクセシビリティを保証するものである。これには聴覚補助具、人口内耳、補聴器、TTYとの互換性が含まれる。

TTYとは、聴覚または言語障害者の電話によるコミュニケーションを可能にするデバイスであり、通常、受話器用の音響カプラー、簡易キーボード、 メッセージディスプレイから構成される。この場合、声によるコミュニケーションだけではなくTTYの機能を提供する電気通信プロダクトへの否音響式TTY 接続ポイントが基準として定められている。 他の仕様としては、音声出力の際の調整可能なボリュームコントロール装置、聴覚技術を含むプロダクトインタフェース、視覚障害者または機械操作や身体動作 の制御に限界のあるユーザのためのキーやコントロール装置のユーザビリティが定められている。

ビデオまたはマルチメディアプロダクト(1194.24)

マルチメディアプロダクトは一つ以上のメディアと関連し、ビデオプログラム、ナレーション付きスライドおよびコンピューター起動によるプレゼンテー ションを含むものであるが、それらに限定されるものではない。規定は、(13インチ以上のスクリーンを持つシステム用の)キャプションデコーダ電気回路と コンピューター仕様のチューナーカードを含むテレビチューナー用の二次的オーディオチャンネルを基準としている。 これらの基準はまた、連邦政府機関が開発または調達する研修用または情報提供用のマルチメディアプロダクションへの字幕化や音声解説も義務付けており、永 続的ではない場合に限り、字幕か音声解説のいずれかをユーザが選択できなければならないとしている。

コンテンツ内蔵、クローズドプロダクト(1194.25)

本節は、一般的にはソフトウェアが埋め込まれているが、しばしばユーザー支援技術を取り付けたりインストールしたりするのが容易でないデザインに なっているプロダクトを対象としている。例としては、情報キオスク、情報取引機器、コピー機、プリンター、電卓、ファックス装置およびそれらに類似したプ ロダクトが含まれる。本基準は、ユーザー支援機器を取り付けなくてもいいように、システム自体にアクセス機能を内蔵することを義務付けている。

他の仕様規定では、アクセス可能な個人使用の機材すなわち受話器や標準的ヘッドホンジャック、タッチスクリーン、音声出力と調整可能なボリュームコントロール装置および制御装置にアクセス可能な位置について定めている。

デスクトップおよびポータブルコンピュータ(1194.26)

本節では、キーボードや他の機械的操作を伴うコントロール、タッチスクリーン、身体的に確認できる形式の使用、そしてポートやコネクターに焦点を充てている。

機能的パフォーマンス基準(C節)

本節で扱われるパフォーマンス要件は、あらゆるプロダクトの評価とB節の技術基準において定められていない技術または構成要素を対象としている。こ れらの基準は、個々のアクセシブルコンポーネントが一つのアクセス可能なプロダクトを製作するために連携することを保証するものである。それらは、入力や コントロール機能を含む操作、機械的メカニズムの操作、視・聴覚的情報へのアクセスを対象としている。また、これらの諸規定は、知覚障害者または身体障害 者が、入力やコントロール、機械的機能などの位置を確認し、特定しあるいは操作することを可能にするよう、また、テキスト、静止画や動画、アイコン、ラベ ル、音声またはそれらに付随する操作支持を含む情報のアクセシビリティ基準を定めている。

情報、ドキュメンテーションおよびサポート (D節)

本基準は、対象となる技術のエンドユーザー(連邦政府職員など)全体へのアクセスについて定めたものであり、ユーザーガイド、エンドユーザー用イン ストールガイド、カスタマーサポートとテクニカルサポートなどを含む。それらの情報は、ユーザーの要望に応じて追加料金を支払うことなく、代替フォーマッ トを利用可能にしなければならない。代替フォーマットあるいはコミュニケーションメソッドには、点字、カセットテープなどの録音、拡大文字、電子テキス ト、インターネット配信、TTYアクセス、字幕・音声解説付きビデオ資料が含まれる。